第45話 完璧な三角
「・・・モーンゼニューモンゼニュァ~」
「イービーヌーブー、オォ~ヌーブー、シュゾ~ン ♪ 」
「モーンゼニュー・・・」
「・・・ダメダメ!わたしってば・・・なに浮かれてんだろ・・・」
『どう?用意出来た?』
『・・・うん、一応・・・変じゃないかな・・・?』
『別に・・・入るよ?』
『うん・・・』
『別に、そんな大したアレじゃないから・・・あ、リボン・・・ほどけてる。』
『え、ほんと?ありがとう・・・やっぱりご両親に会うってさ・・・』
『・・・何か・・・変な感じだね。』
『ほんとに、そんな変なアレじゃないって。よし!今日もきれいだ。』
『じゃ、行こっか?』
『・・・うん。』
「なんで・・・こんな事になっちゃったんだろう・・・」
・・・プルルルルル・・・プルルルルル・・・
『リンダさんと対談・・・?』
『えぇ、実は、サッカー少年に恋して!が大好評でしてね。それで、ぜひ恋愛小説家と伝説のアスリートという・・・』
『この異業種のお2人がですね、一体どんなケミストリーでこの作品を仕上げたのか、その秘密を知りたい!ってファンが多いんですよ。』
『・・・へぇ・・・。あの、僕は・・・その・・・もし先方が良ければ・・・』
『・・・わたしは・・・先方がオーケーなら構いませんけど・・・多分・・・お忙しいでしょうし・・・どうかしらね。』
『今日だったよね?』
『・・・ん?なにが?』
『おじさんとの対談!』
『あぁ・・・そうだっけ・・・。』
『凄いね!おねえさんってどんどん大物作家になっていくみたい。』
『うちのクリスにもリンダさんの才能とやる気を分けてやって欲しいですよ、まったく。』
『ふふふ、私もね、すっかりリンダさんの大ファンなんです。いつも素敵な物語をお書きになるのね。』
『でしょ?やっぱお兄ちゃんとは格が違うよね。』
『あら、チェスはすっかり首ったけなのね。』
『・・・そ、そんなんじゃ・・・なくもないけど・・・へへへ。』
『今日は遅くなりそう?』
『・・・わかんないの、対談って初めてだし。』
『そっか。じゃ、楽しんで来て。』『うん・・・ありがとう。』
『お母様って、本当に料理がお上手なのね。』
『でしょ?』
『すっかり食べ過ぎちゃった。デザートまで頂いて、もうお腹が苦しいもん。』
『ははは!少し歩けば楽になるけど、もううちだし・・・』
『こういう時は、少しくらい家が離れてる方が便利かもね?ダイエットになる・・・』
『ねぇ・・・』
『リンダさん・・・』
『・・・ぼく・・・』
「あぁ!もう一人のゲストがご到着だ!」
「待ってましたよ、カーター先生。今日もお綺麗なのね、きっと写真映えするわぁ。』
「さて・・・」
「ご両人がお揃いのところで、さっそく対談始めちゃいますか!準備してくれる?」
「はい!」
「どうも・・・久しぶりだな。」
「・・・そうですね・・・お元気・・・でした?」
「あぁ・・・まぁな。そっちは?」
「・・・ん?」
「チェスと・・・一緒だって聞いたよ。」
「・・・うん・・・何とか・・・・・・ね、対談なんて何だか緊張しちゃうね?」
「あぁ・・・そうだな。・・・元気そうで良かったよ。」
「うん・・・あなたも・・・。」
「・・・と、いう事で!ファンの皆様からのご要望にお応えしまして、今日はスペシャルゲストにお越しいただきました。」
「今、乗りに乗った女流作家のカーター先生と、我らサンセットラマズが誇る伝説のアスリート、コナーさんとの対談をお届けしようと思います。お二方、今日はよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」「・・・こちらこそ。」
「うーん・・・何か、硬いな。」
「そうですねぇ、もしかして緊張してるのかしら?」
「そうなんですか?緊張してます?」
「いや・・・その・・・」
「・・・こういうのって初めてだから・・・どうしても・・・ね?」
「まぁ、じゃ、徐々にほぐれてもらうとして・・・」
「まずは、お2人の関係についてお伺いしましょうか。」
「・・・か、関係・・・ですか?」
「えぇ、ほら、異業種のお二方がどうして今作で組む事になったのか、気になるってファンが多いみたいです。」
「あぁ・・・えっと・・・」
「確か・・・あれでしたよね?うちのアップグレードをコナーさんにやって頂くことになったのが、きっかけじゃありませんでした?」
「そうそう・・・そうでしたね。こう見えて俺、手先が器用なんで・・・」
「それで、コナーさんとお話する内に、こう・・・」
「どんどん・・・アイデアが沸いて来ちゃったって言うか・・・。」
「ほう。かなり変わった経緯だと思いますが、だからこそって感じですかね?」
「えぇ・・・ほら、アップグレードって時間が掛かるし・・・」
「俺も・・・話好きなんで、こう・・・リンダさんが聞き上手だからかな。
ついつい余計な話をしてしまったんですよね・・・その節は、ご迷惑をお掛けしました。」
「・・・いえ、お陰でこの本が出来た訳ですから。」
「それにしても、これまでの先生の作品とは一味違う、青春スポーツドラマに仕上がっていて、驚いたファンも多かったようです。」
「えぇ・・・わたしも・・・初めての挑戦だったので、上手く仕上がるかは不安だったんですけど・・・」
「コナーさんがわかりやすくサッカーの基礎知識を教えて下さったので、何とか形にすることが出来ました。」
「この作品は青春、スポーツ、そして爽やかな恋愛物語にも仕上がっていますが、コナーさんは読まれましたか?」
「えぇ。サッカーって男臭い世界なんですけど、それがあんな爽やかなドラマになっていて驚きました。」
「主人公のジミーはコナーさんがモデルという説もありますが、どうですか?」
「ははは、そうだったら嬉しいですね。」
「そこんところ、どうなんですか、先生?」
「まぁ、一応・・・たくさん・・・沢山、お話をお伺いしたので、少しは影響していると思います。」
「ほほーん!となると・・・これまでの先生のパターン的に、ヒロインは先生を透過しているのでは、との噂もありますが?」
「まぁ・・・」
「・・・そこは・・・部分的にはそういう場合も、ある事もあります。」
「なるほど。あともう一点。」
「先生の第一作『秘密の公園で』で、話題になった、先生の徹底的な取材力についてなんですが、今回はどういう形で行われたんですか?」
「えっと、主にお話を伺ったのと、試合も観に行かせてもらいました。」
「やっぱり、話よりは実際に観てもらった方が迫力が伝わると思ったんです。」
「なるほど。巷では取材中らしき・・・お二方の目撃情報が後を絶たなかったようですが・・・」
「・・・もしかして・・・お二方って・・・」
「そういう関係だったりするんですか?」
「・・・は?」
「・・・まさか!」
「そ、そんな訳ないでしょう!ねぇ?リンダさん?」「そうですよ!ねぇ?」
「ははははは!ようやく緊張が解けたようで安心しました。」
「・・・もうっ・・・冗談・・・ですよね?」
「もちろん!コナーさんにはご家庭もありますし、いくら緊張を和らげる目的だったとしても、悪趣味な冗談で失礼しました。で、ですね・・・」
「はい、コナーさん!こっちに目線お願いします。」
「カーター先生は、お綺麗なんですからもっとニッコリと!はい、いきますよ。」
「・・・お食事券・・・?なんでまたこんな物を・・・?」
「いや、中の人がどうしても渡せって聞かないんですよ・・・話が進まないとか何とか・・・」
「・・・はい?」
「いや、ほらね、これでまた取材してもらったら第二弾出せるかなーって思ったりしちゃったりなんかして・・・一応、ペアで4枚渡しますけど、出来ればお二方で・・・こう・・・是非、続きをね!お願いしましたよ!では!」
「・・・ちょ・・・ちょっと!」
・・・パタパタ・・・ぁ、駆けて行く足音です。雰囲気雰囲気・・・
「行っちゃった・・・。」
「なんか・・・あっと言う間だったな・・・わりと緊張してたのに・・・」
「わたしも・・・これ・・・どうしよう・・・」
「・・・え・・・チェスと使えばいいよ・・・よし!じゃ、また・・・」
「・・・ね、せっかくだし・・・行かない?」
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今日のテーマソングは『Alicia Keys - Un-thinkable (I'm Ready)』です。
ジョンとリンダの物語が頭に浮かんでから、ずっとここはこの曲のイメージで、それをいつ形に出来るか心待ちにしていました。ようやく・・・ようやくです。
「もしもし?おねえさん?どうだった?対談は?」
「あ、クリスチャンか?うん、上々だったよ・・・それでな、今晩なんだけど・・・」
「・・・うん、そんなに遅くはならないと思うけど・・・ごめんね。」
「いいよ!楽しんで来て。じゃ、後でね。」
「・・・お待たせ。」
「うん?あぁ・・・何食べようか?」
「・・・さっきの質問・・・びっくりしたね。」
「・・・え?」
「そういう関係・・・ってやつ。」
「・・・ははは、ホント参ったな。」
「今も・・・そういう風に見えてるのかな?」
「・・・まさか。」
「だってそれじゃ、お互い困るだろ?」
「・・・だね。」
「さすがに美味かったけど、すっかり遅くなったな・・・送って行くよ。」
「・・・やだ。」
「・・・ん?何か言ったか?」
「・・・ううん。」
「・・・ううん、別に・・・」
「あんまり遅くなると・・・チェスが心配するよな?」
「・・・うん・・・」
『僕たち・・・』
「・・・リンダ?」
「・・・。」
「どうした?食べ過ぎて気分が悪いとか・・・?」
「そうじゃなくて・・・帰りたくないなぁって・・・」
「でも、帰らなきゃな。チェスが心配するから・・・」
「・・・それだけ?」
「・・・え?」
「チェスくんが心配するから帰らなきゃいけないの?」
「それだけ・・・って訳じゃないけど、もう遅いし、帰らなきゃ、な?」
「・・・うーん・・・どうしようかな・・・あなたは?」
「俺は・・・」
「・・・わたしは、もうちょっとだけ・・・一緒に居たいなぁ、なんちゃって・・・」
「・・・リンダ・・・」
「・・・でも・・・ほんとなの、やっぱりわたし・・・あなたが・・・」
「・・・駄目だ。帰ろう。」
「・・・ヤダ!」
「・・・ヤダって・・・駄目だよ。チェスまで裏切るなんて最低過ぎる。」
「どうせ・・・もう全部、嫌なんだもん・・・」
『いつか・・・結婚しよう。』
「それでも・・・帰らなきゃ。それに、人を裏切るって・・・思ってるよりずっと重い事なんだよ。」
「・・・わかってる。」
「わかってない・・・。リンダにはあんな思いさせたくないんだ・・・だから・・・」
「そんなこと・・・」
「もうそんな事どうだっていいから・・・!・・・今だけでいい・・・」
「・・・今だけでいいから・・・お願い・・・」
「・・・わたしのものになって・・・」
ー翌朝ー
わたし・・・どうすればいいんだろう・・・
チェスくんはとっても優しくって・・・
「いつもありがとう。」
「・・・え?チェスくん・・・何?急に・・・」
「ただ・・・お礼を言いたくて・・・」
「ありがとう。」
優しすぎるくらい優しくって・・・
こんなにも・・・わたしの事を想ってくれてるのに・・・
「じゃ、行って来ます!」
わたしは・・・
「行ってらっしゃい・・・」
どうしても・・・
どうしても・・・
あの人の事が忘れられない。
だから・・・