第33話 『あ』から始まる言葉
「・・・ひっく・・・ひっく・・・うぇーん・・・」
「・・・よしよし・・・大変だったね。」
「・・・ひっく・・・」
「だけど、どうして・・・もっと早く知らせてくれなかったの?」
「・・・だって・・・ガンサーが・・・!」
「ガンサーが誰にも知らせるな!って聞かないんだもん・・・
誰とも話が出来ないし・・・でもお葬式の用意はしなきゃいけないし・・・」
「本当に大変だったんだからーっ・・・うぇーん・・・」
「・・・ほんとだね・・・よしよし・・・」
「それで・・・今おじいちゃんって・・・」
「・・・書斎に立て篭もって出て来ないの。」
ー・・・コンコン・・・ー
「・・・おじいちゃん。」
「・・・おじいちゃん?」
「・・・リンダだけど・・・入っていい?」
ー・・・シーン・・・ー
「・・・入るよ?」
「・・・おじいちゃん・・・」
「・・・すぴー・・・・・・すぴー・・・」
「・・・すぴー・・・すぴー・・・」
「おじいちゃん、眠ってるみたい・・・。」
「ここ二日くらいはずっとあんな感じだから・・・寝かせてあげて。」
高齢化の進んでいたセーブなので、どうしても親しいシムとのお別れの機会が多くなりがちです。
3は前日に『そろそろだから会いに行ったらどう?』といったお知らせがあるので、親しいシムとの最期のお別れの時間を持てるところがいいですね。
「さて。じゃ、何か手伝える事は?一人で準備するのは大変でしょう。」
「ありがとう、リンダ。」
何の縁でしょうか、前々からリンダの家によく訪ねて来ていたガンサー。
リンダもよくゴス邸を訪ねては、この気難しい夫妻と時間を過ごすのが大好きになっていました。
訪ねたり訪ねられたり、道端で世間話をしたり・・・この家のシムとは思い出もたくさんでした。
それだけに、やっぱり・・・悲しいね、おじいちゃん。
「大きなお屋敷だから、準備も大変そうだね。」
「リンダが手伝ってくれて助かる。しかも朝一で来てくれて・・・ほんとにありがとう。」
「ううん。これくらい・・・やらせてよ。」
「リンダ・・・」「さ!支度、支度・・・!」
ー・・・ピンポーン・・・-
「あら、もうこんな時間・・・お客さんがどんどん来ちゃいそうね。」
「・・・どうしよう、裏の掃き掃除まだ終わってないのにー。」
「よし!じゃ、それわたしに任せて!トリはこっち忙しいでしょ。」
やっぱり・・・悲しいね、リンダ。
「えぇーい!一人にしてくれと言っておるだろう!!」
「ちょっと・・・ガンサー、落ち着いて・・・」
「うるさーい!」
「わしは・・・わしは一人で静かに喪に服したいんじゃーっ!!」
「・・・ね・・・どうしたの?」
ん?気難しいガンサー炸裂です・・・ww
「もうみんな帰ってくれと言ってるじゃろ!!」
「まぁまぁ、落ち着いて・・・まだお悔やみも言ってないじゃないですか・・・。」
「お悔やみなんぞ・・・いらーーーーーーん!!」
「みんな心配して来てくれたのに、そんな言い方ないじゃない・・・ねぇ。」
「なぬ・・・リンダまでおるじゃないか!」
「うん・・・ニュース聞いて飛んで来たの・・・さっき・・・」
「・・・も・・・!」
「もう駄目じゃーっ!今日はもう我慢ならん!」
「おい、ちょっとガンサー・・・落ち着い・・・」
「やかましい!もう駄目なんじゃーっ!来るんじゃよ!葬式の客が!!
コーネリアの葬式じゃからの!そりゃ遠くからも色々来るじゃろうな!」
「色々じゃ!色々遠くから来るんじゃ!」
「何の話してるんだ・・・?」「・・・さぁ?気が立ってるから・・・」
「親戚に古い友人に金持ちじゃ!こんな時だけ親しげにしよる!あぁムカムカするわ!!」
「・・・遠くから・・・?色々・・・来る・・・。」
「当たり前じゃろ!うちを何だと思うておる!ゴス家じゃ!!名家じゃよ!!」
「・・・えっーと・・・わたし、着替えに戻らなくちゃ・・・。」
「よし!わかったらさっさと帰っておくれ。
おい小僧、リンダを送ってやらんか!!気の利かん男じゃの!!」
「・・・えぇ・・・なんで俺?」
「いいか!ちゃんと最後まで送り届けるんじゃ!スケコマスでないぞ!!」
「・・・そんな事・・・する訳ないだろ。」してますけどね・・・。
ほら、リンダって過去に色々ございますでしょう?
名家のご両親とは訳アリの疎遠って感じでございましてねぇ。
その昔は、リンダの家とも親しくしていたガンサーです。
ここの誰も知らない事情も知っている・・・それがガンサーですのでね、
それとなく・・・なく・・・www
リンダにこの屋敷から離れなさいと忠告してくれたのですね。
やっぱり、このシム・・・好々爺!
さて。ガンサーの機転と、ちょっとした巡り会わせで思いがけず、二人の時間を過ごす事になったお二方はと言いますと・・・
「落ち込んでる?」
「ん、うん・・・あなたも災難だったね。」
せっかく巡った季節は秋。山奥でこそっとピクニック、いいですわねぇ。
「・・・今日はいつもより凄かったな、ガンサーの剣幕・・・怖かった?」
「ううん・・・。ふふっ・・・でも・・・」
「・・・あの剣幕見てたら・・・悲しい気分も吹っ飛んじゃったみたい。」
「そうだな。」
ー翌朝ー
「コーネリアさんのお葬式なのに・・・」
「わたし行けないんです・・・。」
「・・・誰が来てるか、わからないから・・・。」
「・・・どうして・・・こんな事になっちゃったんだろう。」
『お嬢様、学校の時間でございます。』
『はぁい!今行きまーす!』
『・・・お見合い?』
『彼なら家柄も申し分ないだろう。どうだ?気に入ったか?』
『・・・この人と・・・結婚するってこと・・・?』
『まぁ、リンダが気に入ればだが。一度くらい会ってから決めても遅くなかろう。』
『・・・だけど・・・』
『今晩はお招き頂きまして、どうもありがとうございます。』
『何を仰いますか・・・』
『・・・直に一つの家族となるのですから、気になさらず寛いで下さい。』
『わたし・・・話を進めてなんて言ってない!』
『嫌!あんな漫才師みたいな背広の人なんて絶対イヤです!!』
『しかしリンダよ、先方は乗り気でな。うちとしても婿に来てくれるなら・・・』
『お父様なんか・・・お父様なんか大っ嫌い!!』
『・・・こんなの・・・酷すぎる・・・』
『可哀想に・・・』
『あなたと離れるくらいなら・・・こんな所、出て行った方がマシだもん・・・』
『僕だって・・・こんな事で君と離れるくらいなら・・・』
『・・・離れるくらいなら・・・・・・一緒に行こう。』
『どこに・・・?』
『どこか遠くで・・・二人で暮らそう・・・きっと幸せにするから・・・!』
『・・・うん!』
「・・・若かったんです・・・わたしたち・・・。
・・・若かったけど・・・後悔なんて・・・」
「・・・後悔なんてしてないもん・・・。」
『・・・会いたい』
「リンダ・・・?」
「どうした?」
「・・・ちょっと・・・考え事してて・・・」
「ごめんなさい・・・急に変なメールして・・・」
「いいから・・・」
「帰らなきゃな・・・」
「・・・うん。」
「一人で・・・平気か?」
「・・・うん、もう大丈夫。」
「ただ・・・ちょっと悲しくて・・・」
「・・・そうだな・・・」
「・・・リンダ・・・」
「・・・ん?」
「・・・いや・・・何でもない。」
『・・・いいだろ?』
『・・・疲れてるの。』
・・・愛してる・・・
『あなたって、それしか考えられないの?』
・・・こんなおっさんに言われても・・・困るだけだよな。
・・・何考えてんだろう。
・・・最後に言ったのって・・・いつだったか・・・。