キャリーの正体
本当はもっと簡単な茶番で終わらせようと思ったのに・・・
妄想はどんどんどんどん膨らんで結局こんな事になってしまいました・・・。
いや、ただの『ホワイトカラー』の観過ぎかな・・・w
今日のテーマソングは『axwell /\ ingrosso - Something New (Amtrac Remix)』です。
家の前に車が停まっている日は、家に帰っちゃダメ!
・・・というのが、うちの決まりでした。
男の人が居るから、邪魔しちゃいけないんだって。
その『男の人』ってのは、もちろんお父さんではありません。
私の父親は・・・流しのギター奏者とか何とか・・・詳しい事は知りません。
「・・・お腹空いた・・・。」
これが子供の頃の私。
シムズの世界は優しい世界。
外に出てバーベキュースポットを漁れば、たいていは何かにありつけたけど。
家に帰れないってのは・・・子供ながらに結構きつかったな。
あの素敵なラウンジに出入りしているセレブが羨ましくって。
いつかは私もあそこで煌びやかな生活が出来るかなって・・・そればっかり考えていました。
そんな私に訪れた、同級生の誕生日パーティー・・・。
この時、初めて・・・
世の中には、こんな世界もある事を知りました。
優しいお母さんと・・・
・・・お父さん。
お母さんの手作りケーキと、テーブルいっぱいのご馳走。
広々としたリビング・・・大きなテレビ・・・フカフカのソファ。
それまで漠然としていた『お金持ち』のイメージが、一気に具体化した瞬間でした。
それ以来、暇を見つけては高級住宅街を散策するのが楽しみになりました。
どうせ家に居たって、ろくなことにならないし。
あの立派な洋館の中はどうなっているんだろう?って・・・
少しでも覗いてみたくてウロウロ・・・
ウロウロ・・・。
今思えば、明らかに不審な子供だね。
でも、そうやってお金持ちの家の中を想像して・・・
そして・・・
いつか私にも足長おじさんが現れる、それまでの辛抱だ!って・・・。
あの人が、男の人と言い合いになった日は最悪です。
あの頃は、必死に自分の非を探したけど・・・
今なら、はっきりわかる・・・
私には、何の非も落ち度もなかったって。
でも・・・もうこんな生活・・・本当にウンザリでした。
一刻でも早く、足長おじさんに・・・
ううん・・・私の本当のお父さんお母さんは、一体いつ迎えに来てくれるんだろう。
そんな事ばかり考えていたのに・・・
結局、誰も迎えになどは来ず・・・
あの人も、風邪をこじらせて早々に亡くなってしまいました。
完全に天涯孤独となった私。
足長おじさんは待っていても来てくれない。
だったら・・・
自分で掴みに行くしかないんだって、ようやく気が付きました。
でも、まずは必死になって勉強して、医者としての道を確保しました。
あの人みたいに自分が馬鹿なせいで、みじめな人生を送るのは嫌だったから。
その合間に、憧れのソーラーフレアでセレブとの出会いを期待したけど・・・
これが全然引っ掛かってくれないの。
そんな時に出会ったのが・・・
私の恩人であるお師匠さん。
「残念だったね。」
「・・・何の話でしょう。」
「こんなに長時間粘ったのに空振りだろ?」
「あなたこそ。」
私とお師匠さんは・・・辛い生い立ち・・・という共通点があったおかげか・・・
出会ってすぐに意気投合しました。
お師匠さんにも、辛い生い立ちがあるのに・・・
今では高級スーツに身を包んだ立派な紳士です。
どうしたらこの若さで、そんな高級スーツを買えるんだろう?
その秘訣を知りたくて知りたくて・・・
素直に聞いてみたら、あっさり教えてくれた。
「俺、詐欺師なんだよ。」
そう、お師匠さんは超一流の詐欺師だったのです。
この凄い邸宅も、そんな詐欺の仕事で手に入れた数ある物件の一つとか何とか。
世の中には・・・そんな手段で・・・こんな豪邸を手に入れる方法があったのね!
医者の道は確保できたけど、まだまだ収入は頼りなく、何より激務でした。
だけど、もうこれ以上みすぼらしいスターターハウスに住むのも耐え難い。
だから、私はもう素直にその手段、方法、その全てを教えてもらう事にしました。
お師匠さん曰く・・・
私にはその素質があったとか何とか、快く引き受けてくれたのです。
さっそくイメチェンから始まり・・・話術、身のこなし・・・高級品のお手入れ方法から攻め際、引き際まで・・・。
正直、こんな私に何が出来るのか・・・?
不安ばかりだったけど・・・
髪を切って、なるべく無害そうな見た目にしてみたら・・・これが大当たり!
さっそく釣れたのが、チョイ悪セレブのルイス氏でした。
彼を取っ掛かりにして、念願のセレブの世界へ足を踏み入れた私。
子供の頃に憧れた通りの世界がそこにはありました。
そして・・・
その手段方法を全てを教えてくれたお師匠さんとも・・・ついにお別れの時です・・・。
もちろん寂しくて、引き止めたかったけど・・・
ヒドゥン スプリングスでの大きな仕事が控えていたそうだから・・・。
「人生が変わるくらい大きなチャンスだったら、自分を騙してでもモノにしろ。」
それが・・・お師匠さんからの最後の教えでした。
その後は・・・お師匠さんの教えの通り・・・
ターゲットを見つけたら・・・
まずは・・・よく観察し・・・
焦らず騒がず、じっくりとチャンスを待つ。
時には大胆に・・・。
一見華やかにしか見えないセレブ生活に隠れている秘密を・・・
完全に理解し、それを利用する。
そうやって・・・
ついに手に入れた第一の家。
だけど・・・
私が本当に欲しかったのは・・・
私を一生愛してくれるであろう・・・硬派な血が流れている男性との関係でした。
もちろん、お金持ちである事は重要な条件だったけど・・・
最初は・・・騙すつもりで始めた恋愛ごっこだったのに・・・
こんなに正面から、ぶつかって来られたら・・・
いくら私だって・・・罪悪感を覚えます。
そんな私に・・・
ついに訪れた・・・人生最大のチャンス。
ここで私は、一か八かの賭けに出ました。
すなわち、ランドグラーブ氏との関係を自ら暴露したのです。
結果は・・・
もちろん成功です。
こんなに一途に想ってくれる男性を裏切るなんて・・・
あんなに綺麗に着飾って完璧な女性に見えた彼の元妻も・・・
結局は、あの人と同じ馬鹿な女だったのです・・・。
私はそんな間違いはしない。
でも・・・
このおじ様との関係は、とても刺激的で都合のいい・・・そして特別な関係だったから・・・
『キャリーの手料理が食べられなくなるのは寂しいよ。』
全てを理解した上で私を受け入れてくれたおじ様には、少しでも幸せを取り戻して欲しくって。
『えぇ?・・・思ってるよりずっと難しいんだよ・・・?そんな事。』
『いいから!今日帰ったら奥様に命令してみて!「たまに飯を作れーっ!」って。』
『・・・うーむ・・・そんな事言おうもんなら、どんな目に遭うか・・・』
『ね、私を信じて!きっと上手く行くから!』
そう、きっと上手く行くはず。
どんなに強い女だって、たまには男に頼りたい時ってあるはずだよね。
そして・・・
私は、ついに・・・
子供の頃にあれだけ夢見た白亜の豪邸と・・・
私を一生愛してくれるであろう男性との結婚を手に入れました。
全て計算通り。・・・一つの誤算を除いて。
お師匠さんには悪いけど・・・私は自分を騙す必要はないみたい・・・。
本当のところは・・・私にもまだよくわかりません。
もう自分が何者だったのか・・・忘れてしまったから・・・。