第13話 自浄式
気持ちの悪いパーカーに翻弄されて、チェスターの救出劇があって一安心したら、
今度はまさかのジョンの妻とご対面ですっかり消耗してしまったリンダ。
わかっていても、やっぱり妻の破壊力は相当なのでした。
そんなちょっと凹みモードのリンダ・・・今日は何もする気にならなくて・・・ぼーっと海を眺めるくらいしか出来ません。
「・・・ばかみたい・・・。」
・・・わかっちゃいるけど止められない・・・そんな恋心に少し浮かれていただけに・・・ね。
と・・・
「みぃーつけた!!」
「・・・ローズさん・・・。」
「こんな所で、なに黄昏れてるのよ。」
「・・・。」
「はは~ん・・・さては・・・」
「そんな顔してるって事は!!ロマンスを見つけたのね。」
「・・・。」
「まぁ!図星なのね図星。」
「・・・それが・・・色々ありまして・・・」
「へ~ぇ・・・それは・・・ちょっとした爆弾落とされちゃったのね。」
「・・・わたし・・・まずい事しちゃいました。」
「別に、悩む必要なんてないんじゃないの?」
「・・・え?」
「だってそうでしょ、あなたは誘惑的なシムなんだし。」
「・・・でも・・・相手には・・・。」
「まったく、誘惑的が聞いて呆れるわ。」
「・・・。」
「いいじゃない、別に何か始まってる訳でもないんだし。」
「・・・?」
「まだ何も始まってないんでしょ?」
「もちろん・・・そう・・・です・・・。」
「なら気にする必要ないわよ。人の気持ちなんて変わってしまうものなんだし。」
「この先どうなるかなんて、まだわからないじゃない?
もしかしたら、意外とアッサリ興味なくなっちゃうかもよ?」
「・・・。」
「あなた誘惑的なシムのくせしてずいぶん真面目なんだから。」
「・・・一応・・・節操のない事だけは避けるように努力してるんです。」
「ふふふ、賢明だわ。」
「そうだ!もう悩んでないでそんな時は体を動かすのが一番なのよね。」
「そう・・・なんですか?」
「そうそう!ローズさんが言うんだから間違いないわよ。」
「ここのジムってちょっと素敵なのよね、パーッと発散してらっしゃいな。」
と、適当すぎるローズさんのアドバイスに・・・何故だか妙に納得してしまってやって来たのが街のジム。
「ふ~っ・・・。」
健康的で明るい雰囲気のジムで体を動かして、少しは気分もすっきりできたようです。
(・・・あれ?ジムなのに・・・自浄式?)
手入れの行き届いた清潔なシャワーで汗を流してすっかりご機嫌のリンダ。
せっかく体を動かしたのに、アイスクリームなんか食べちゃって。
ま、でも、気分が沈んだ時の甘い物は効果的ですね。
「あれ、リンダ!こんな所で会うなんて意外だね。」
「クリスさん。」
「運動なんて必要なさそうなのに。」
「ちょっと・・・発散しに来たんです。」
「ふーん、僕はアウトドア嫌いだから、ここのジムは重宝してるんだ。そういや、弟が世話になってるんだって?」
「チェス君?うん、仲良くしてもらってます。」
「ふふふ、あいつ何でだか知らないけど友達少ないみたいでさ。」
「チェス君が?」
「うん、フレンドリー気質なのにな、うちの家系では珍しいタイプなんだ。」
「けど、君の事はすごく慕ってるみたいだからさ、悪いけどよろしく頼むな。」
「こちらこそ。」
「そうだ、ちょっとうち寄ってかない?ここから歩いてすぐなんだ。」
と・・・言われるがまま、やって来たクリスとクリスチャンの自宅。
「あれ、リンダじゃん。」
「こんにちは、お邪魔します。」
「ゆっくりして行って。」
「うん、あの、ちょっと化粧室借りてもいい?」
「化粧室って、ふはは、ほんとに面白い子だな。」
「・・・え?このシンクも自浄式・・・?」
「シンクの自浄式って珍しいね。」
「ん?」
「ここのシンクって自浄式でしょ?さっきのジムのもそうだったし。
すごく手入れの行き届いた街なんだね、感心しちゃった。」
「あぁ、親父だよ。」
「え?」
「親父が器用さマスターだから暇を見つけてはどこもかしこもいじくりまわしてんの。」
「・・・ジョンさんが?」
「ほんとにお義父さん好きだよね、いじくるの。」
「あ!」
「・・・そうか、リンダの家って確か、全部新しいのに替わってるんだっけ?」
「・・・う、うん。」
「親父に言っといてやるから。」
「え?」
「・・・何を?」
「自浄式にしてもらえばいいじゃん。」
「いい!いいです!!」
「なんで?掃除すんの面倒だろ?」
「そうだよ、作家なんかやってたら泡風呂ばっかで汚れやすいだろうし。」
「ううん!ほんとに平気。わたし掃除するの好きなんだ。」
「そう?遠慮しなくていいのに、変なやつだな。」
「ほんとにやめてね、掃除するのも結構楽しみなんだから。」
「はいはい。」
「なんか・・・腹減ったなー。」
「ねー。」
「何か・・・腹減ったなー。ジロジロ・・・」
「・・・え?」
「ねぇ、リンダ!何かうまいもん作ってよ。」
「うまいもん作って!!」
「もう、調子いいんだから。」
「うまい!」
「ほんとだ!久しぶりだねぇ、こんなにまともな味の食事。」
「ふふふ、ほんとに仲良さそうだね。」
「だろ。」
「何か悪かったな、料理作らせちゃって。」
「ううん、全然。」
「さっきの話だけど。」
「何?」
「自浄式だよ、親父に言っとくから。」
「いや!ほんとにいい!!」
「何でだよ、自浄式の方が便利だろ?親父も喜ぶし。」
「もういじれるところないんだってさ、この街。」
「そっか・・・でもほんとにいいから。お礼もできないし・・・。」
「お礼?何言ってんの、好きでやってるんだから気にしなくっていいんだって。
キーライムパイでも食わしておけばご機嫌だから。」
「でもね、業者さんにやってもらうと、すっごい高いんだよ、自浄式って。」
「そうなの?」
「そうだよ、だからほんとにいいの。」
「変なやつだな。」
「・・・。」
「何?いきなり黙って。」
「お父さんにそっくりなんだね・・・。」
「だろ?よく言われるよ。」
(ほんとに・・・そっくりすぎだよ・・・。)
「送ってくれてありがとう。」
「聞いたんだ、ヘンタイパーカー事件。」
「そうなの?」
「あんな騒動の後で、1人で夜道に放り出す訳にはいかないしな。」
「弟がえらい怒ってるよwマジで。」
「ふふふ、だってほんとに気持ち悪かったもん。」
「じゃぁな!」
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
こうして・・・諦めかけたリンダの元に・・・
優しい天使?意地悪な悪魔?が微笑みかけたのでしたが・・・続きはまた今度。