第9話 お客さんが続々 その1
さて、爽やかな風が吹き抜けるサンセットバレーにて・・・
「・・・ふふふ。」
先日の海辺での昼下がり、よほど素敵だったのでしょうね。
その影響でしょうか、ようやくリンダの執筆熱にも火がついたようです。
・・・と。
「こんにちはチェスター君。」
「また遊びに来ちゃった。」
「ふふふ。」
「こんにちは。」
「あら、こんにちはトリさん。」
「今日は近くに用事があったから、寄ってみたんだけどご迷惑だったかしら。」
「いいえ、どうぞ。」
「ふ~ん・・・こじんまりしてるけど居心地の良さそうな家じゃない。」
「へへへ。」
「この間はうちの人(ゴーバイアス・コフィ)が変なこと言ったみたいでごめんね。」
「ううん、こちらこそ何だかごめんなさい。」
「まったく、何が『リンダだけにリンリン~』よねぇ。」
「ふふふ。」
すっかりサンセットバレーに馴染んでいるようですね。
家でのんびり執筆をしつつ暮らすというのは、お気に入りの遊び方の一つです。
なんてたって、自由に時間が取れるってのは魅力的なんですよね。
そんな気ままな過ごし方の中・・・
・・・ピンポーン・・・
「あら、これはゴスさん。ごきげんよう。」
「うむ。」
「いいお天気ですね。」
「今日はの、おぬしにこの街のしきたりを教えてやろうと思ってな。」
「まぁ、すごく嬉しいです、どうぞ中へ。」
「まだまだこの街のことって知らないことも多くって、すごく助かります。」
「じゃろうな。」
「何か熱いものでも・・・」
「ん!?あれは?」
「え?」
「あのライムじゃが、まさかビーチのライムじゃあるまいな。」
「・・・そう・・・ですが・・・。」
「何じゃと!?おぬし、自分が何をしでかしたかわかっておるのか?」
「・・・あの・・・?」
「ビーチの果物はこの土地のご先祖にお供えするための由緒正しい果実なんじゃぞ!」
「・・・それは・・・」
「あれがなければこの街は来年子宝に恵まれなくなるのじゃ!祟りじゃ祟り!!」
「あのっ・・・ごめんなさい。」
「ごめんで済めば警察はいらんわい。」
「・・・知らなかったで済まされる事ではないでしょうけど・・・本当にごめんなさい。」
「究極の品質のライムを箱一杯取り寄せることはできます・・・
代わりになんてならいでしょうけど・・・あの・・・なんてお詫びをすればいいのか・・・。」
「・・・ときにおぬし。」
「収穫したライムはまだあるのかね?」
「・・・はい・・・全部あります。」
「では・・・」
「・・・そのライムを使って直ちにキーライムパイを作ってくれるかの?」
「・・・?」
「どうじゃ?」
「・・・あの・・・?」
「・・・ぷぷぷっ・・・これは本当に真面目なお嬢さんじゃの。」
「・・・話がよく飲み込めません・・・。」
「あーはっはっ!!」
「・・・?」
「ローズから面白いお嬢さんが越して来たと聞いてな、どんなもんか様子を見に来てみればこの有様、愉快愉快。」
「・・・それじゃ・・・」
「老人の悪趣味なイタズラじゃよ、心配せんでも先祖も祟りもありゃせん。」
「・・・。」
「お前さんの反応が面白くてちとやり過ぎてしまったようじゃ。すまんかったの。」
「・・・もう・・・」
「もうっ!びっくりした~っ・・・」
「あーはっはっ!」
「本当に笑い事じゃないですよ~。」
「許してもらえるかの?」
「それじゃ・・・お茶にしましょうか?」
「うむ。」
「それにしても・・・ゴスさん・・・」
「なんじゃ。」
「どうして・・・ビーチのライムだってわかったのかな・・・って。」
「あぁ、坊主じゃよ。」
「・・・?」
「コナーの坊主がの、この街で果物摘みのお嬢さんを見つけたって言うておってな。」
「・・・コナーさんが?」
「そんな話を聞いたもんでの、ちょっとからかってやろうと思ったんじゃよ。」
「そっか・・・。」
「うむ、なかなかいい味じゃ。」
「よかった~。」
「これならいつでも嫁に出せるわい。」
「ふふふ。」
「お前さん、リバービューの子じゃろ?」
「・・・何故ですか?」
「そんだけおっとりしてるツインブルックっ子なんぞ知らんぞな。」
「・・・言葉だけでそんなにわかるものですか?」
「育ちは隠せんてな。」
「・・・え?」
「あいつもこれが好きなんじゃよ。」
「あいつって・・・?」
「さーて。」
「変なおじいちゃん。」
「ふぉふぉ。」