第8話 潮風に乗って
「なかなかいい仕事もないし・・・」
「そろそろ書かなきゃいけないんだけどな・・・。」
「やっぱり摘みたてが一番だもんね。」
「・・・。」
「こんにちは。」
「・・・えっ・・・?」
「こんにちは、リンダさん。」
「・・・こんにちは。」
「いい潮風ですね。」
「・・・えぇ、本当にいい潮風です。」
「ジョギング中に果物摘みのお嬢さんを見つけたんで、思わず立ち止まってしまいました。」
「もしかして・・・」
「ん?」
「ここのライムって勝手に採っちゃダメだったとか・・・?」
「いやいや、大丈夫ですよ、お好きなだけどうぞ。」
「良かった~。」
「ここのライムもリンゴも潮風に揉まれてるのにずいぶん元気だから、時々いただいてちゃってたから。」
「へぇ、ガーデニングにも詳しいんですか。」
「詳しいって程ではないんですけど・・・少しは・・・。」
「うちのお義父さんがガーデニングの達人でね、これで少しは話についていけるようには・・・」
「・・・ならないか。」
「ふふふ、ガーデニングって結構奥が深いから。」
「確かリバービューは農業が盛んでしたよね。その影響ですか?」
「そういう訳でもないんですけど・・・。」
「ツインブルックの人にしては、おっとりしすぎてるからなぁ、リンダさん。」
「・・・おほほほ。・・・ジョンさんはここが地元ですか?」
「えぇ、ラマのユニホームを着てるからにはもちろんそうです。」
「ふふふ。でも、ツインブルックには本当に住んでいたんですよ。」
「あそこの連中は気性が荒いから大変だったでしょう?」
「ふふふ、ほんとにいつもどこかでケンカしてるんです。」
「そうそう、試合でお邪魔するのもビクビクしながらで。」
「毎日ジョギングされているんですか?」
「毎日でもないですよ、もう年なんで。」
「・・・そんなことないです。」
「いやいや、正直結構きついんです。」
「大変そうなお仕事ですもんね。」
「上の息子のクリスチャンもスポーツキャリアを選んだんで、ロバートも・・・できれば親子3人でラマのユニホーム着れたらいいなと思ってるんですけど、どうなんだろ・・・。」
「・・・それは・・・」
「・・・あ、ロバートにはこの話、内緒にしてて下さい。」
「・・・もちろん。」
「自分の将来はあいつに選ばせてやりたんで。」
「・・・すいません・・・こんな話。」
「・・・いえ。」
「ジョンさんって・・・」
「・・・本当に素敵なお父様なんですね。」
「・・・。」
「・・・。」
「そう・・・かな・・・。」
「あ・・・すいません・・・変なこと言っちゃって・・・。」
「・・・そんなこと言われたらしょうがないな・・・。」
「・・・え?」
「これ俺のとっておきなんですけど・・・」
「・・・あ、それって・・・」
「有名人の物真似?」
(初期の頃は『高慢ちき』特質にはこのコマンドがあったんですが、いつの間になくなっていますね。)
「そうそう。」
「ふふふっ。」
「どうです?」
「誰の真似なのかわかんないけど、そっくり。」
「とっておきですから。」
「ふふふっ。」
「・・・そろそろ仕事の時間かな。」
「お引止めしちゃったみたいでごめんなさい。」
「・・・そんなに謝らないで・・・下さい。」
「あ・・・ごめんなさい・・・。」
「・・・やっぱりリンダさんがツインブルック出身は無理があるかな。」
「・・・そうかも。」
「じゃ、これで失礼します。」
「・・・えぇ・・・。」
「・・・ごきげんよう。」
「・・・ごきげんよう。」