第4話 突然の訪問者
「あれ?確か・・・チェスター君だったよね。」
「うん、こんにちは。」
「こんにちは。」
「・・・えっと・・・。」
「・・・???」
「その・・・何か引越しのお手伝いできる事ないかなって・・・。」
「ほんと?でももうほとんど片付いちゃったんだけどね。」
「・・・そっか・・・。」
「あ、でも・・・ね、一つだけお願いしたい事があるの。」
「ここだけ電気切れてて困ってたから助かっちゃった。どうもありがとう。」
「ううん。」
「ね、良かったらお茶にしない?」
「うん。」
「おねえさんって・・・」
「ん?」
「ツインブルックって所から引っ越して来たんでしょ?」
「・・・う、うん。」
「ツインブルックってどんなところ?」
「え?」
「僕行った事ないからさ。」
「・・・そうだね、こことはちょっと雰囲気違うかな。」
「そうなの?」
「うん、何ていうか・・・ちょっと気性が荒い人が多いかも。」
「そうなんだ。」
「うん、ほんとにいつでもどこでも誰かケンカしてるの。」
「それは、ちょっと嫌かもしれないね。」
「ふふふ。」
「だから引っ越して来たの?」
「・・・え?」
「だってそんな物騒な街ってちょっと嫌だもの。」
「・・・うん、そうだね。」
「ここは気候もいいし、みんなのんびりしてるからさ、きっとたくさんいい本が書けるんじゃないかな。」
「・・・うーん。」
「え?おねえさんって作家さんでしょ?」
「それが・・・どうしようかなって。」
「なんで?すごくいい本だったって、お母さん泣いてたもん。」
「・・・そうなの?」
「僕も今読んでるところなんだよ。僕にはちょっと難しいけど・・・でも何かすごいと思った。」
「・・・ほんと?」
「うん、何ていうか・・・本物の作家さんって感じ。お兄ちゃんとはちょっと違うね。」
「ん?」
「あ、お兄ちゃんも一応作家やってるからさ。」
「・・・じゃもしかして・・・クリスさんがチェスター君のお兄さん?」
「うん、似てないけどね。」
「・・・そんな事ないよ。」
「とにかく、おねえさんって何か人と違うもの持ってる気がするんだ。」
「・・・そうかな。」
「だからさ、次もきっといい本が書けると思う、絶対だよ。」
「・・・チェスター君・・・。」
「書けなくてうーってなってる時は気分転換にその辺散歩したりしてるよ、お兄ちゃんはね。」
「そうなんだ。」
「なんか、ちょっと気分変えると新しいアイデアが湧いてくるんだって。」
「うんうん。」
「あ、あとよく泡風呂にも入ってるみたい。気分がすっきりするって言ってたよ。」
「そっか・・・じゃ試してみる。」
「あ、そういえば、この間お母さんおねえさんと会ったって。」
「あれ?そうだっけ?」
「公園でチェスしてたって。」
「え?じゃもしかしてチェスター君がチェスの名人なの?」
「うん、まぁね。」
「じゃ今度一回お相手してもらわなくちゃ。」
「こう見えても私、構強いんだから。」
「へへへ。」
「いきなり訪ねて来てごめんなさい。」
「ううん、初めてのお客様だからとっても嬉しかったの。」
「ほんと?」
「うん、よかったらまた来てね。」
「いいの?」
「もちろん。」
「・・・頑張ってみようかな。」