第36話 代償
「あぁっ・・・大変・・・どうして・・・」
「落ち着いて・・・今、お医者さんが診てくださってるから・・・」
「大丈夫なの?ロバートは・・・大丈夫なのっ・・・?」
「ロバート・・・!ロバート・・・!」
ーその日の朝ー
「なぁ、お前やる気あんの?」
「え?ごめんロバート、何か言った?」
「・・・ったく。はい!もう席交代しようぜ。」
「・・・え、だって僕いつも白い駒が好きなんだけど。」
「あーはいはい、つべこべ言わないの。」
「このクソ寒い中、こっちは好きでもないチェスとリンダに付き合ってんだから。」
「だって、早くこのお土産渡したいんだもん・・・」
「おねえさん、オーロラスカイのスノーボール、気に入ってくれるかな?」
「知るかよ。」
「・・・子供っぽかったかな・・・やっぱり民族衣装のネックレスにすればよかったかも・・・」
「なぁ、さっきの話、なんで無視すんの?」
「何が?」
「好きでもないチェスと リ ン ダ だろ。」
「え?」
「マジで?ほんと鈍い奴だなwwwww」
「ちょっと何言ってるのかわかんないよ、ロバート。
今考えてるんだから話しかけないでくれる?・・・あ、そうやって邪魔する作戦?」
「邪魔したところでどうせ勝てないよ。」
「おねえさん・・・帰って来たら教えてね。」
「あーはいはい。わかったって。」
・・・は?
「はぁっ・・・終わっちゃった。」
「楽しかった?」
「うん・・・すっごく。」
「また行けたらいいな。」
「お茶でも飲んで行く?」
「いや、さすがに帰らないとまずい。」
「そうだね・・・」
「ん?」
「あのね・・・本当にありがとう・・・無理させちゃって・・・」
「無理なんかしてないよ。たまたまラッキーだっただけ。さて・・・帰るか。」
「うん、気を付けて。本当に・・・」
「わかったから。お礼はもう十分だよ!」
・・・まさかな・・・
そんな訳ないだろ・・・?だって・・・チェスのやつ・・・
「ロバートってば!」
「・・・え?」
「ロバートの番だよ!」
「今、後ろ見ない方がいい。」
「なんで?」
「・・・ハートさんちの奥さんが・・・ビキニで歩いてんの。」
「・・・うわぁ・・・気の毒だね。」
「だろ・・・見てやらない方がいいよな。」
「・・・ん・・・時差ボケかな・・・眠い・・・」
「ロバートなの?早かったのね、さっき出掛けたばかりなのに。」
「・・・いや・・・俺だよ。」
「あら、お帰りなさい。楽しかった?」
「あぁ・・・」
「・・・え?ロバートはもう戻ってるのか?」
「嵐で早めに予定を切り上げたらしいわ。私も切り上げて戻って来たの。」
「・・・そうだったのか・・・悪かったな。」
「せっかくだから今夜はクリスたちも誘ってどこかで外食する?」
「あぁ・・・そうだな・・・。」
「・・・ねぇ、おねえさん帰って来たの見た?」
「いや、鷲みたいに見張ってたけどまだだぞ。」
「そっか・・・」
「なんだよ?」
「ぼく、もうボーイスカウトに行かなくちゃ・・・」
「また明日来てみ・・・」
「もう付き合わないぞ。このクソ寒い中、何時間待たされたか。」
「じゃ電話してから訪ねてみる。ロバートごめんね、もう行くよ。」
「おぅ、頑張って来いよ。」
まさかな・・・
たまたま・・・どっかで出くわして送ってやっただけだろ。
・・・でも・・・だとしても・・
・・・なんで家の中に入る必要がある?
いつから・・・?
・・・家に着いたよ。まだわからんけど多分、大丈夫。
とりあえず平穏だよ。安心して。また会いに行く。・・・
「ロバート遅いわねぇ。」
「またチェスと出掛けてるのか?」
「なんかリンダさんにお土産とか言ってたけど・・・よく知らないわ。」
これって無駄にドキドキしちゃうパターンだと思います・・・。
後ろめたいのって結構しんどいもんね。
待てよ・・・
そういや・・・リンダの家のアップグレードとかでよく出掛けてたっけ・・・
そういや・・・あの頃って妙に浮かれてた気がする・・・
てことは・・・もうだいぶ前から・・・?
あの親父が・・・?そんな器用に取り繕えるのか・・・?
くそっ・・・わかんねーな・・・
「ダメだよ、十代に酒は売れないよ。」
「ケチ・・・」
「・・・言ったな?」
「はい!これでも飲んで機嫌直せよ。」
「なにこれ・・・?」
「うちの特製ドリンクだよ。酒は入ってないぞ。」
ったく・・・やってらんねーよ・・・
あー・・・むしゃくしゃする・・・!!
「骨折と軽い打ち身・・・」
「えぇ、運が良かったですね。ただ少しややこしく折れていますので、しばらくは入院になりますよ。」
「・・・骨折か・・・」
「・・・よかったな。」
「・・・ロバート・・・」
「どう?」「今寝てるの・・・お医者様は何て?」
「骨折と打ち身だって・・・」
「まぁ・・・可哀想に・・・でも命に関わらなくてよかったわね・・・」
「おい・・・ちょっといいか?」
「・・・はい。」
「大変だったな。」
「えぇ・・・」
「ミッシェルも仕事を始めて最近うちを空ける事が多かったのか?」
「・・・そう・・・かもしれません。」
「何か変わった様子はなかったのか?」
「・・・・・・正直・・・ロバートが何考えてるのかわからなくて・・・」
「前から不安定だったのに、お前がしっかりしないでどうするんだ?」
「・・・。」
「・・・すいません。」
「まぁ難しい年頃なのはわかるけどな・・・
そう言えば・・・ビーストを盗んで転んだらしいぞ。」
「・・・ビースト・・・ですか・・・」
「あんな大きなバイク・・・一体どうしたんだ、あいつ・・・」
・・・返信遅くなってごめんなさい。時差ボケで寝てたの。
旅行の件、問題になってないみたいで安心しました。
またね。・・・