第31話 チェスターの場合
「・・・であるからして・・・」
「あーです。こーです。わかりますね?」
いきなりですが、チェスターです。
ぼんやりしていて、情緒過剰で、その上、感動しやすいシムです。
趣味はチェスかな。
フレンドリーな家系なんだけど、僕はあまり人付き合いが上手い方ではないかも。
一応、僕にも『フレンドリー』特質は付いてるんだけどね。
『チェスは優しすぎるから、たくさんの人と友達になったらパンクするのよね。だからそれでいいのよ。』と言ってくれる優しい母です。
『天性の料理人』だからすっごく料理が上手なんだよ。
父です。厳しくも優しい自由世界の指導者。
僕も小さい頃はお父さんみたいな政治家になりたいなと思ってたけど、
この性格には向かない仕事だと最近わかりました。
兄です。僕には全然似ていません。
一応作家ですが、全然仕事をしません。いいのかな、それで。
もう結婚して家を出ていますが、今でもよく面倒をみてくれる優しい兄です。
↑・・・こうなったら、もう僕のことなんか完全に忘れてるけど、昔からのことなので慣れました。
僕の数少ない友人も紹介します。
まずはロバート。
お兄ちゃんのパートナーの弟なので今はもう家族かな。
最近ちょっと様子が変なんだけど、昔からの友達です。
最近、永遠の親友契約も結びました。
そのお父さんのジョンさんです。
昔から僕を可愛がってくれてます。
そのせいではないけど、僕もおじさんのことは大好き。
気さくで話がしやすくて、とってもいい人なんです。ちょっと自分好きだけど。
それに、なんたって伝説のアスリートだもん。憧れちゃいます。
それから・・・
最近新しくできた友達のリンダさん。
ぼくは『リンダさん』って、なんか照れるので『おねえさん』と呼んでいます。
おねえさんと初めて会ったのは、正確には、初めて見たのは本屋さんの前でした。
新しく引っ越してきた人がいるらしいってことは知ってたけど、
まさかこんなにきれいな人だと思わなかったので、
なんだか、しばらく目が離せなかったのだけは覚えています。
それからしばらくして、
僕にしてはほんとに珍しいんだけど・・・
どうしてあんな事ができたのかな。
ビーチから見えるおねえさんの家に自然と足が向いていたんです。
いきなり訪ねて行ったのに、おねえさんがとても優しくしてくれたのがすっごく嬉しかったんです。
それからずっと仲良くしてくれてるのが、ちょっと自慢です。
こんな僕ですが、こう見えて一応彼女がいます。
ミルドレッドって子なんだけど、向こうから告白してきたんだよ。
キスだってするけど、なんかくすぐったくてちょっとドキドキします。
そんな僕たちはこの度、婚約する事になりました。
別に、付き合ってるんだし、いつかはそうなるもんだと思っていたし・・・
お父さんたちも何だか嬉しそうだし、家族が増えるのは悪い事だと思わなかったんだけど・・・
『お前さぁ、もう一回ちゃんと考えた方がいいと思うぞ。』
どうしてロバートはあんな事言うんだろう・・・
わからないけど・・・
そう・・・この時はまだ・・・
まだ僕は・・・何もわかっていなかったけど・・・
「なーんだ!チェスくんだー!」
「ごめんね、お待たせして。」
「ううん・・・」
「・・・あれ?なんか元気ないね?」
「別に・・・」
「どうしちゃったんだろ?お腹空いてる?あ!今日はちょうどね・・・」
「・・・あのね、僕さ・・・」
「うん?」
「僕・・・婚約したんだ。」
「婚約?」
「うん・・・か、彼女と。」
「そっかぁ!おめでとう!」
「ね、ちょうどご馳走作ってたの。
お祝いにって言ったら変だけど、よかったら食べて行かない?」
「くすっ・・・」
「え?」
「ううん。ただ、チェスくんに先越されちゃったなと思って。」
「?」
「結婚。」
「あぁ・・・。」
「ねぇ・・・」
「ん?」
「おねえさんって、結婚した事ある?」
「んー、結婚させられそうになった事はあるよ。」
「・・・させられそうにって?」
「うちの関係でね。全然好きな人じゃなかったから・・・昔の話だよ。」
「そっか・・・。」
「でも、好きな人と結婚出来るならいいよね。」
「・・・おねえさんって・・・」
「ん?」
「好きな人って・・・居る?」
「・・・んー、好きな人?」
「うん・・・居るよ。」
「そうなんだ・・・その人の事ってすごく好き?」
「・・・うん。すごく好き。」
この時の僕は、まるで何もわかっちゃいなかったけど、
家族が居て・・・
ロバートが居て・・・
おねえさんがいて・・・
僕は・・・
それだけで幸せだったんだ。